いつも応援してくれる人たちがプレゼントしてくれた〈ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK〉を見た。
デビューしてから熱狂のワールドツアーを続けた1965年くらいまでを丹念にドキュメントしている。ビートルズの映像はかなり見ているが、初めて見た映像も多くあった。
当時のライヴを見て改めて驚くのが、PAもなく、足元のモニターもなく、観客の金切り声の中で、すばらしくバランスの取れた演奏をしていることだ。楽器と歌のバランス、ボーカルとコーラスのバランス。今だったらチャンネルごとに音を録ってミックスするところだが、60年代のライヴだから、そんなことはしていないはずだ。
そして「自分たちの演奏する音が観客の声にかき消されてまったく聞こえなかった」ということなのに、ボーカルが音を外すこともない。ビートルズは恐ろしく鍛えられたライヴバンドなんだってことが分かる。
ケネディ大統領が暗殺され、公民権運動のまっただ中のアメリカで、ビートルズが黒人差別について言及したことで、初めて会場に黒人の姿が見られるようになったという。
一石を投じることはできたんだろうが、世界の情勢を変えるまではいかなかった。
それで思い出したことがある。1984年、ブルース・スプリングスティーンの〈Born in the U.S.A Tour〉のニュージャージーでの凱旋ライヴを見に行った。俺の記憶では、アリーナにつめかけた観客は白人しかいかなった。
ツアーの合間のレコーディング風景も少し見ることができる。
これも驚くことなんだが、デビュー当時のレコーディングは、たった4チャンネルしかなかった中で、あれだけのサウンドを作ったことだ。
もうひとつ思い出した。アルバム《花を育てたことがあるかい》のレコーディングの時、ある曲で、アレンジャーがドラマーに「ここのオカズは、リンゴ・スターの感じで叩いてください」と言ったら、ドラマーがすごい顔をしかめて嫌がったことがあった。
リンゴ・スターのドラミングは、総じて軽くてご陽気と思われているところがあるが、とんでもない。あんなに変幻自在で魅力的なドラマーはいない。
ビートルズの作品は、聴くたびに、見るたびに、新しい発見がある。
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