アルバム《成長》をリリースした年、俺は初めての短編小説集『Shape Of Love 愛というかたち』を出版した。その中に、浜田省吾さんの歌からインスパイアされた『いつかもうすぐ』という短編を書き下ろした。
物語は、ロスに住む女性がひさしぶりに日本に帰国し、浜田省吾さんのライヴでかつての恋人と再会するというストーリー。
きっかけは、《成長》のマスタリングとジャケット撮影のためにロスに行ったこと、そして浜田省吾さんの代々木オリンピック・プールでのライヴに招待してもらって見に行ったことだった。短編の中にライヴの模様を書いていて、それは実際に俺が見たライヴのままだ。アンコールで〈いつかもうすぐ〉を歌うところも。
物語を書き終え、本人の承諾を得なければと思い、浜田省吾さんのプロダクションに原稿を送り、当時はまだメールなどなかったから、俺のプロダクションの電話番号と、一応礼儀として俺の自宅の電話番号を添えた。当然、浜田さんのスタッフの方が俺のプロダクションに電話してくれるものと思っていた。
ある日うちの電話が鳴り、「浜田です」と省吾さん本人からかかってきた。びっくりした。
「ぜひ掲載して」と快諾をいただいた。
小説を読んで、そこからインスパイアされて歌が生まれることはよくある。浜田省吾さんの歌を聴くと、物語を書きたくなる。そんな空気感を浜田さんの歌は醸し出している。