2025年1月28日火曜日

ありがとうビーンズ

  もはやホーム。俺とベチコと河村博司君をつないでくれた場所、ローリング・ビーンズでの1年半ぶりのライヴ。「帰って来た」という気持ちになれる場所は、そう多くはない。
 この夜も、ここでしか味わえない空気の中で歌うことができた。心から感謝。
 告知前だけど、5/10にまたローリング・ビーンズでやることになっている。興味があったら空けておいてね。
 写真は確か、藤岡君の弟さんが撮ってくれたもの。

01.夢の島
02.オリオンのティアラ
03.談合坂パーキングエリア
04.煙突のある街
05.ばあちゃんごめんね
06.成長
07.雨の音を聴きながら
08.PrimaとNoir
09.ガソリン・タウン *
10.汚れたバスケットシューズ
11.傷だらけの天使
12.世界はすばらしい

E1.いつか河を越えて
E2.もうすぐ
E3.種の歌 with 千田富美代、Soulmates(藤岡徹, 飯山彰)

*未発表曲


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2025年1月22日水曜日

〈Reasons to keep singing〉(不定期掲載)

 1990/3/31、俺は九段会館のステージにいた。

 前年の3月にアルバム《夢の島》をリリースして、CBSソニーとの契約を切り、7月の後楽園ホールで当時のバンドDADとの活動を終え、気持ち的には孤立無援の状況だった。
 それでも歌は生まれた。

 デビューして7年。当時はバンドブームの真っ盛りだった。客席のみんながぴょんぴょん跳ねるものだから、会場の2階席が揺れて倒壊が危惧され、「ロックお断り」のホールが出るほどだった。
 九段会館もその例にもれず、リハーサルの時に会館スタッフが客席で監視の目を光らせていた。だがこの夜にバンドスタイルでプレイするのは、初演の〈YELLOW WASP〉1曲だけだった。


 7ヶ月ぶりのライヴだった。九段会館は古い歴史を持つ会館で、キャパは1000を超え、3階席まである。

 ステージに楽器がセッティングされ、その奥に幕が下りている。
 開演。(SEでの)大きなアンコールの声に重なり、ディズニーの〈It’s a small world〉がオルゴールの音で流れ、幕が左右に開く。ソファがあり、俺が寝そべって煙草を吸っている。横のテーブルには花束。ライヴが終わった後の楽屋という設定だ。そこからもうひとつのライヴという物語が始まる。

 アコースティック・ギターだけでステージをやることは、それまでになかった。その上、初めてハーモニカホルダーをつけてハープを吹き、新曲の〈紫の夜明け〉からスタートする。
 タカミネのギターを使っている。チェット・アトキンスモデルの白いギター。あと、もう憶えていないギターもあって、合計4本を使っている。当時はよく弦を切っていたから。
 ギターを交換しているローディーは、今や某楽器店の取締役だ。
 ピアノで新曲の〈結晶〉を歌い、ティンパニを叩きながら〈HEAT OF THE NIGHT〉を歌う。ティンパニの叩き語りをしたのは、多分俺が初めてなんじゃないかな。
 〈Passing Bell〉を歌う時、ステージ後ろにスライドが投影される。俺が撮影したものだ。当時のスタッフに、歌詞に合わせて細かく投影のタイミングを指示していたから「手が震えた」って言っていたっけ。
 後半、マンドリンのTacoさん、ベースの珍太、サックスのSMILEYが登場し、モノクロームのステージに色を添えてくれる。
 そして本編のラストで〈YELLOW WASP〉をプレイした。

 アンコールの最後で新曲の〈前夜〉を歌い、拍手の中、奥のソファに寝そべり、幕が閉じる。オープニングと同じ構図になる。
 モアアンコールとして、幕の間から登場し、アコギを弾いて生声で〈1 WEST 72 STREET NYNY 10023〉を歌った。
 俺にとっては過渡期で、転換期で、とても重要なライヴだった。ずっとバンドサウンドにこだわっていたが、この後、アコースティックギターだけで全国を回るようになる。どんなサウンドであれ、歌を届けることが何よりも大切なことだと思うようになった。それは、今に続く考えだ。


 今回の《小山卓治・夢プロジェクト》の返礼品を考えている時、その九段会館の動画が残っているはずだと、クローゼットの奥にあるVHSテープの山をひっくり返した。なんとか見つけたが、35年前のことだし、当時のスタッフが資料用に撮影していたVHSテープだから、もう劣化しているかもしれない。
 業者に依頼してデータ化してもらった。若干のよれもあり、照明が強いと顔が白く飛んでしまっている。現代のデジタルの画質には遠く及ばないが、そこには32歳の俺がいた。


 長くなってしまうが、その時期にファンクラヴ〈OFF〉に投稿したエッセイも紹介しておきたい。
 当時は音楽雑誌の取材でいろんな話をしてはいたが、心の底の本音を話すことは決してなかった。しかし3ヶ月に1回、ファンクラブの会報に載せるエッセイにだけは本音を吐露していた。
 時代が変わり、今のファンクラブ〈ONE〉でいえば、ラジオでのおしゃべりがそれに近いかな。


総ての“君”への手紙 1990/3

 前略
 元気にしているかい? この紙の上での3ヶ月に1回の手紙のやり取りでは、近況を報告するのが精一杯で、お互いが今どんなことを考えているかまで分かり合うのは少し難しかった。でも今度の3月31日は、本当にひさしぶりに君に会うことができる。僕はこの何カ月ぶりかのデートを前にして、毎日胸を躍らせている。
 君に伝えたいことが山ほどあるんだ。君に聞かせたい歌がいっぱいあるんだ。君と同じ時間を共有し、歌を歌うことで、そこに新しい理解や、疑問や、確信や、摩擦や、それら総ての新しい関係が生まれるはずだ。そして僕たちはそいつを熱く受けとめ合うことができるだろう。僕は今すごくドキドキしている。

 ざっと7年前のこと、僕はある連中との関係を結んだ。
 僕は言った。
「さあ、新しいものを作ろうぜ」
 連中は言った。
「さあ、儲けようぜ」
 去年、僕はそいつらとの関係を断った。うんざりするほどもつれた話し合いの末、金と書類と憎しみの言葉が投げつけ合われた挙げ句の、それがお互いの結論だった。
 最初の一歩の時、僕には大きすぎるスポットライトが用意された。なぜならそれは、僕だけのものじゃなかったからだ。見回すと、そのスポットの中にはたくさんの雑魚どもがニヤニヤといやらしい顔で舌なめずりをしながら立っていた。おこぼれを頂戴しようと、上目づかいで僕に下卑たジョークをつぶやいた。戦うことすら忘れ、ただ何かを咀嚼し、鑑賞し、計算高い理解の仕方しかできないやつらだった。
 しかし連中が当てこんでいた現ナマが派生しないと踏むやいなや、連中は突然、高飛車な態度を取り、潮が引くよりも早くそこからいなくなった。その時、連中にとって僕は、もう終わった人間だった。
 でも連中が気づかなかったことがある。それは、僕がプライドを持った1人の人間だったってことだ。そして、やつらの行動の一部始終を僕がはっきりとこの目で見ていたということだ。
 今そのことについて話す気にはなれない。饒舌は、公的な勝利を治めた者だけに許される。だが見ているがいい。僕がまだくたばっちゃいないってことを思い知らせてやる。僕の魂を叩きつけてやるぜ。

 ブタどもはいなくなった。僕と君と、そして理解し合うことのできる仲間たちが残った。僕はその理解者たちと一緒に新しい音楽を作っていく。誰にも左右されず、一番自分らしいやり方で。
 君にその新しい曲たちを聞いてもらえる日がとても待ち遠しい。
 3月31日はお互いに少しずつお洒落して、九段会館で会おう。

 僕たち、何度でもやり直すことができるんだ。


九段会館ダイジェスト動画(YouTube)


Photo : Junji Naito


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2025年1月20日月曜日

2025年ライヴ、スタート!

  今年最初のライヴは、TAKUJI, HISASHI & TOBENからスタート。満員のお客さんも楽しんでくれたようだ。
 個人的には、前回はファルセットにしていた高い音程のところを地声にしたことで、ダイナミックさに貢献できた。
 アンサンブルでは、3人が(PAの力も借りて)マイクと口元のわずかの隙間の調整で声量をコントロールできた。それぞれの声をより理解できたからだろう。

■1部
湯川トーベンソロ
白浜久ソロ

小山卓治ソロ
 05.雨の音を聴きながら
 06.ダリア

07.夢のカリフォルニア
08.花いちもんめ

■2部
09.あの空の何処かに
10.Night After Night
11.もっと
12.クリスタルレインドロップ
13.フォークロック
14.救いの扉
15.路傍のロック
16.花・太陽・雨

E1.ノーノーボーイ
E2.Under Dog

E3.風景
E4.タンポポ


 「少年と風お弁当」を3人に頂いた。ありがとう!

 さて、一座は名古屋へ。以下のそれぞれをクリックして、詳細を確認してね。

〈TAKUJI, HISASHI & TOBEN Ⅲ〉
■2/1(土)愛知 名古屋 Brushup

 翌日は、俺のソロライヴを開催する。最近取り上げてこなかった歌を中心にセットリストを組もうと思っている。どちらのライヴも楽しんで!
■2/1(土)愛知 名古屋 Brushup











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2025年1月17日金曜日

TAKUJI, HISASHI & TOBEN ライヴ!

 昨日、スタジオに3人が集結して、本番前のリハーサル。前回に比べて格段にアンサンブルが美しくなった。
 俺が6弦のギブソン、トーベンさんが12弦のヤマハ、白浜さんがリッケンバッカー。
 明日の新宿御苑 Rutoはソールドアウトだが、当日券が出るかもしれない。下記Rutoへ問い合わせるか、明日、足を運んでね。
 9曲を収録した2枚目のCDも発売する。

 そしてこの勢いのまま、2/1に名古屋 BrushupでTAKUJI, HISASHI & TOBENのライヴを開催する。

それぞれ、以下をクリック!
1/18(土)東京 新宿御苑 ライブ&バーRuto
2/1(土) 愛知 名古屋 Brushup

TAKUJI, HISASHI & TOBEN ファーストダイジェスト(YouTube)




Photo : Takuji


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2025年1月14日火曜日

『風神雷神』原田マハ

  原田マハの『風神雷神』を読了。
 この人は元キュレーターだけあって、絵画をモチーフにした小説は断然おもしろい。ピカソの「ゲルニカ」をテーマにした『暗幕のゲルニカ』、ルソーの絵をめぐる『永遠のカンヴァス』などなど。

 この本の主人公はまだ10代の俵屋宗達。この人の作品は多く残されていて、「風神雷神」は国宝なんだが、生没年だけではなく、その生涯の記録はほぼ残っていない。だからこそ大胆なフィクションが可能になるんだろう。
 織田信長に謁見し、信長の前で絵を描き、「宗達」の名前を授けられ、狩野永徳が描いた「洛中洛外図屏風」の助手を務め、天正遣欧少年使節と共にローマへ長い旅をし、まだ少年だったカラヴァッジョと出会う。
 荒唐無稽だが、登場人物たちの表情までが生き生きと見えてくる。


Photo : Takuji


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2025年1月10日金曜日

ドン・マクリーンの〈Babylon (バビロン)〉

  最近の音楽の聴き方は、もっぱら朝一にコーヒーを飲みながらAmazon Unlimitedでアルバムを1枚聴く。たまにはミックスリストで様々な音楽を聴くこともある。

 ある朝のこと。マイナーキーのバンジョーのイントロが鳴り、どこか聞き慣れた声の男性が歌い始めた。コードはひとつだけ。違うメロディがどんどん重なって美しいアンサンブルになっていく。2分足らずの歌。
 誰だろうとクレジットを見たら、ドン・マクリーンとある。

 ドン・マクリーンといえば〈アメリカン・パイ〉。当時としては信じられない8分を超える歌で、シングルのA面とB面に分けてリリースされ、それでも1971年にナンバー1になった。
 俺が知っていたドン・マクリーンの歌はその1曲だけだ。

 流れてきた歌を調べたら、タイトルは〈Babylon〉。歌詞はこれだけ。

By the waters
The waters
Of Babylon

We lay down and wept
And wept
For thee Zion

We remember
Thee remember
Thee remember
Thee Zion

 そうか。こんな歌を作ってTAKUJI, HISASHI & TOBENでやったらすごいアンサンブルが生まれそうだ。

 ドン・マクリーンは、その後もアルバムを出し続け、79歳の今も現役のようだ。




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2025年1月8日水曜日

TAKUJI, HISASHI & TOBEN リハーサル

  白浜さん宅に3人が集合してリハーサル(と、軽い新年会)。声の混ざり具合が格段によくなってきた。
 リハーサルの合間に、1/18にリリースするアルバムに収録する曲に、俺のコーラスをダビングする。これが最後の作業。
 白浜さんから「上に行く? 下に行く?」と聞かれ、「下にいってみようかな」、つまりボーカルの下のラインのコーラスを入れることにした。これが意外に難しい。
 上パートのコーラスは、基本3度上にメロディを乗せればいいが、下はちょっと複雑なラインになる。バイオリンに対してのビオラみたいなものかな。ちょっと地味な立ち位置だけど、アンサンブルの幅をすごく広げられる。でも、難しい。コーラスではほぼ下パートを歌っているトーベンさんの苦労が分かる。何度も歌い直した。

 あと1回スタジオでリハーサルをして、東京と名古屋の本番を迎える。

 詳細は下のリンクをクリック 予約方法はページ一番下の〈チケット予約申込み方法〉へ
 〈TAKUJI, HISASHI & TOBEN Ⅱ〉
■1月18日(土) 東京 新宿御苑 ライブ&バーRuto 残席僅少

〈TAKUJI, HISASHI & TOBEN Ⅲ〉
■21日(土) 愛知 名古屋 Brushup


Photo : Takuji


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2025年1月4日土曜日

名古屋へ!

  2025年、最初の名古屋のライヴは2日連続だ。

 まずは、TAKUJI, HISASHI & TOBEN(白浜久さんと湯川トーベンさんとのユニット)が初めて東京を離れて名古屋に上陸する。俺のライヴとはカラーが違う3人のアンサンブルを、ぜひ楽しんでほしい。
 Brushupは去年初めてやったが、音響も照明もすばらしいところだ。
 1/18のライヴから発売する新しいアルバムも持っていく。

 翌日は俺のソロで、Rosemary Hart。ここは初めての場所。どんな風に歌が響くのか、すごく楽しみだ。
 ここのところ名古屋ではよくライヴをやっているが、まだまだ歌っていない歌がたくさんある。その辺りをセレクトしてみようかと思っている。

詳細と予約は、以下をクリック。
2月1日(土) 愛知 名古屋 Brushup
22日(日) 愛知 名古屋 Rosemary Hart







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2025年1月3日金曜日

『言葉の流星群』

  池澤夏樹の『言葉の流星群』を読了。
 一般的に「雨ニモマケズ」のイメージが強い感がある宮沢賢治の作品を、丁寧に、センテンスごとに、そのニュアンスを紐解いてくれる。
 こんな1文があった。

子供の頃に夢中になって読んだ本は少なくない(中略)だが気がついてみれば最後に手にとってからずいぶん時間がたっている。(中略)それに対して、ぼくはまだ宮澤賢治を読み終えていない。

 俺も同じだ。ふと何かのおりに読み返したくなる。賢治の本は相当読んだし、小説『明日なき暴走』ではたくさんの詩の断片を引用したりした。

 まことのことばはうしなはれ
 雲はちぎれてそらをとぶ
 ああかがやきの四月の底を
 はぎしり燃えてゆききする
 おれはひとりの修羅なのだ

 遠くなだれる灰光と
 歪んだ町の広場の砂に
 わたくしはかなしさを
 青い神話にしてまきちらしたけれども
 小鳥らはそれを啄まなかった

 きみたちとけふあふことができたので
 わたくしはこの巨きな旅のなかの一つづりから
 血みどろになって遁げなくてもいいのです

 いまこそおれはさびしくない
 たったひとりで生きて行く
 こんなきままなたましひと
 たれがいっしょに行けようか

 あんなおそろしいみだれたそらから
 このうつくしい雪がきたのだ

 ああ友だちよ
 空の雲がたべきれないやうに
 きみの好意もたべきれない

 向ふにひかるのは雲でせうか粉雪でせうか
 それとも野はらの雪に日が照ってゐるのでせうか
 氷滑りをやりながらなにがそんなにをかしいのです
 おまへさんたちの頬っぺたはまっ赤ですよ

 引用したものは分かりやすいが、概して賢治の詩(彼はそれ心象スケッチと呼ぶ)は難解なものが多い。文字だけを追っていても理解できなくて、何度も読み返すことがある。
 そして賢治の詩は音楽でもある。読んでいると、リズムや旋律が浮かんでくることがある。

 密かな夢だが、仕事を全部うっちゃって、1年くらいかけて(なんなら日本を離れて)賢治の言葉に浸っていたいと思うことがある(筑摩書房から全集19冊セットが出版されている ¥158,062!)。
 その詩、童話、言葉のひとつひとつを噛みしめるように読んでみたいと思う。

 と、そんなことを夢想しながらも、4月以降のライヴのスケジュールがどんどん決まっていく。本当に嬉しいことだ。
 詳細はまだ決まっていないから日程だけ書いておく。空けておいてね。

■4/12(土)福岡
■4/13(日)広島
■4/26(土)西荻窪
■5/10(土)一橋学園
■6/07(土)阿佐ヶ谷
■6/14(土)名古屋
■6/15(日)静岡
■6/28(土)いわき
■6/29(日)弘前

 今年は、何としても富山へ行って「全県制覇」を目指したいところだ。




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