ブルース・スプリングスティーン & E STREET BANDの新譜《ノー・ニュークス・コンサート1979》。
恐ろしいほどパワフルだった。映像を見ながら震えた。いや、正確に言うと、震えていたあの頃を思い出した。
ブルースのサード・アルバム《明日なき暴走》がアメリカで大ヒットした頃、ロンドンでは、ザ・クラッシュやセックス・ピストルズなどのパンクが台頭していた。
パンクも熱かったが、何かが決定的に真逆だった。赤い炎と青い炎、とでも言えばいいか。
変わらないことの大切さを、日々思う。
だがやはり、変化こそが重要。同じテーマで同じ歌を作っていても、まったく意味がない。ブルースだってそう思っているはずだ。
年齢を重ねるうちに、歌のテーマは“怒り”ではなく、“切なさ”になっていく。
「世の中なんてひっくり返してやる」と息巻いていた若造は、やがて、自分の力ではどうしようもなく変えられないことが世の中には山ほどあると知り、それでも生きていかなきゃと、前ほどのフットワークがなくなった足でも強く歩き始める、その“切なさ”がテーマになる。
「世の中を変える」のではなく「自分を変える」ことなのだと気づいた時、人は謙虚になれる。
〈最終電車〉を世に出した頃、当時の若い男性のお客さんは、1コーラスに出てくる若い男に思い入れてくれた。その同じ男性が、今は3コーラスの酔っ払いの男にリアルを感じている。
25歳で作った〈カーニバル〉は今も歌える。でも今、〈カーニバル〉のような歌を作ることに意味を感じない。作るなら、違うテイストになるのは当然のことだ。
シャウトは遠くなった。
それでも! 叫ばなければいけない時がある。
Photo : Takuji
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