先週末のローリング・ビーンズでの河村君のライヴは、とてもホットな夜になった。
アルバム《はるか》に収録した〈世界はすばらしい〉の最後の部分のコーラスを、河村君主導でビーンズのお客さんたちに歌ってもらったから、そのお礼もかねて遊びに行くことにしたんだが、ゲストとして歌わせてもらえることになった。
photo : Masashi Koyama
話は4年半ほどさかのぼる。
オフィシャル・ファン・コミュニティー〈ONE〉のウェブ・マガジン〈eyes〉2013年 春号に、〈Wonder 4対談〉を掲載した。終了したばかりの〈30周年記念ライヴ〉の映像を全員で見ながらおしゃべりするという企画。その中で、俺はこんなことを話した。
「アイリッシュ・テイストのメロディを思いついてんだけど、なかなか詞が乗らないんだよな」
まだメロディの断片だったが、それが〈世界はすばらしい〉の原型だった。
2015年1月、曲作りに専念するために1ヶ月ほど香港に行った。〈ハヤブサよ〉〈パパの叙事詩〉〈もしもあの時〉が生まれ、〈世界はすばらしい〉のメロディが完成し、歌詞も半分ほどできたところで帰国になった。
帰って仕上げるつもりだったが、俺にとってあまりにもドストレートなテーマだから、どうしても歌詞を書くことができないまま時間が過ぎていった。
新しいアルバムに収録できるかどうか半々だった。締め切りが近づいても「どこまでストレートに歌えるか」ずっと考えていた。最後の最後にようやく気持ちが固まって歌詞を完成させ、レコーディングした。
〈世界はすばらしい〉は、9/18 横浜 Thumbs Upで、バンドでの初披露となった。
8/19の長野 OREADでアコースティックで初めて歌い、9/16にアルバムを先行リリースしたが、Thumbs Upに集まってくれたお客さんのほとんどが初めて聴いたはずだった。
演奏を始め、歌が進む中で、客席の空気が変わっていくのをリアルに感じた。みんなの気持ちが凝縮されていき、それが爆発するような感じとでもいうか。
新しい歌を披露する時は、みんなじっくりメロディや詞を感じようとしてくれることが多い。あの時は途中から手拍子まで起こった。こんなことは今までで初めてだ。歌が終わり、エンディングの音にかぶさるように拍手が起こった。こんなことも初めてだ。
今までにない強い手応えを感じた。
でも。
この歌をアルバムのラストに入れようとは思わなかった。この歌をアルバムの結論にはしたくなかった。この先の人生で、そして世の中が、「世界はすばらしくない」と思ってしまうこともあるだろうから。
ただ、今の時点で、どうしても言っておきたかった。
世界は、すばらしい、と。
photo : Masashi Koyama
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