自粛太りという話をよく聞くが、俺はいつも以上に体を動かすようにして、少し体重をしぼった。見た目はさほど変わらないが、体重計は嘘はつかないだろう。
以前、一時的に太ったことがある。
1989年の4月、東京 恵比寿 Factory1での4日連続ライヴの前、喉にポリープができた。声帯ににきびのようなものができる症状で、声帯がうまくしまらなくなり、声が枯れてハイ・トーンが出にくくなる。
ポリープは手術で切除するしかなく、連日のリハーサルと4日間のライヴを乗り切るため、毎日のど飴をなめ続けた。今みたいにノンシュガーなどなく、それが原因で太ってしまった。当時は色々なストレスを抱えていて、それもあったかもしれない。
ライヴの直後に手術をした。執刀は、耳鼻咽喉科では日本で指折りといわれる、米山文明先生にお願いした。腕の悪い医師だときちんと切除できなくて、一生声がかれたままになるという話を聞いていた。
米山先生は、初来日して声の調子を落としたマイケル・ジャクソンを診察するため、ライヴ当日に後楽園球場の楽屋へ行ったという逸話を持っている。
先生の医院は、声を仕事として使うたくさんの人たち(シンガー、政治家、アナウンサーなど)の駆け込み寺になっていた。
手術は成功し、半月ほど絶対に声帯を動かしては駄目ということで、無言の行になった。当時はメールもなく、仕事の連絡などが大変だったことを思い出す。
それ以来、声のケアには気を遣うようになった。ライヴが続いた後は十分に休ませる、冬は部屋で加湿器を使う、乾燥したホテルではマスクをして寝る。とはいえ、煙草をやめたのはそれから20年以上後になるが。
1989年 東京 恵比寿Factory1 photo : Junji Naito