『ニール・サイモン戯曲集』は、今も仕事場の書棚に並んでいる。
反目しあっていた男女が、ふとしたきっかけで一夜を共にする。朝になって我に返った女性が男性に言う。
「昨日のことは忘れて」
「駄目だよ! もう日記に書いちゃった」
激しく咳き込む女性が男性に言う。
「煙草をちょうだい」
「煙草? 水の方がいいんじゃないか?」
「水じゃ煙が出ないじゃない」
「毎朝走ってるんだ」
「何を追いかけて?」
「息が詰まるような気がする」
「西48丁目にすばらしい耳鼻科を知ってるよ」
「真実はともすると、とても恐いものだから」