2018年3月23日金曜日

〈Aの調書〉 光の鉄格子

 1983年、俺のデビュー・ライヴが下北沢の本多劇場で開催された。
 5曲目の〈Aの調書〉、最後のバースのシャウトがあり「あなたの正義より 僕の方が正しい」と歌いきった瞬間、ステージのはしからはしまで、白いライトが何本もまっすぐに降りた。それは光でできた鉄格子で、俺は牢の中にいた。
 後で映像を確認して、鳥肌が立った。
 その物語のような照明をオペレートしてくれたのが、当時、魔法陣という会社にいた葛西ちゃんだった。
 一緒にツアーに出るようになり、同い年だった葛西ちゃんとはいろんな照明のアイデアを出し合って、それをステージで形にしていった。
 プライベートでも、お互いの家に遊びに行って、お酒を交わしながら、音楽の話、照明の話、将来の話など、尽きなかった。
 舞台監督は何人も替わったが、80年代が終わるまで、葛西ちゃんだけはずっと一緒だった。
 仕事をする機会がなくなった後でも、何年かに1度くらい連絡は取り合っていたが、会う機会はなくなってしまった。

 少し前、葛西ちゃんからメールをもらい、25日のバンド・ライヴの照明をやってくれるとのこと。
 すごいことになった。間違いなく最高のライヴになる。

1983 Photo : Junji Naito