2020年12月26日土曜日

モンステラを育てる

  ある日ブラリと立ち寄ったフラワー・ショップで、モンステラを購入。時期外れではあったようだが。
 それがきっかけで、友人のYouTubeチャンネル「くまパン園芸」にゲスト出演することになった。「せっかくだから」とBGMも提供。

 〈花を育てたことがあるかい〉を作った頃は、サボテンさえ枯らす男だった。春になってこのモンステラがちゃんと育っていたら、「サボテンを枯らす男」は返上できるな。


 アルバム《花を育てたことがあるかい》のライナー・ノーツに、こんな文章を書いた。35歳の時だ。

「君に話したいことがあるんだ」

 すべては一瞬に始まった。それが恋だと僕にはすぐに分かった。その瞬間に僕が感じていたものを君も感じていたと思う。濃密な空気が流れた。それを愛と名づけることができると信じた。

 愛は瞬間に生まれる。でも愛は育てなければいけない。生まれっぱなしの愛は赤ん坊のようなものだ。自我の固まりで、求めることしかできない。そんな愛はひと晩でしぼんでしまう。僕らはそんなはかない出会いや事件をくり返しながら、今までこの街で何とか生き延びてきた。でも、もうそろそろしっかりとこの手につかめるものが欲しくなったんだ。僕はこの愛を育てたい。

 僕は君に告白しなくてはいけない罪が山ほどある。

 僕はいつまでたっても大人になりきれない。僕はいつでも不完全なままだ。なぜなら僕は誰かを特別な存在にしてあげることができない。子供が駄々をこねるように、僕はいつも自分が1番だった。思いやる気持ちも持ってはいるが、自分の調子のいい時だけの話だ。僕は心の底から誰かに優しくしたことなんて1度もなかった。僕は自分が傷つけられるよりもはるかに多く人を傷つけた。未熟さゆえの罪をたくさん犯してきた。これからも罪を重ねていくだろう。でも、もし君と一緒にいることができれば、無意識に犯す罪だけは免れることができるかもしれないと思い始めている。

 抱きしめる力よりも、奪いとる力よりも、優しさの方がまさっていることを僕は初めて知った。だからもう愛することを恐いとは思わない。僕は完全じゃない。君と2人でひとつになろうなどと傲慢なことを考えているのでもない。ただ、君といると優しい気持ちになれるんだ。

 こんな告白は君好みじゃないかもしれない。でも君も、力ずくで手に入れたものがその瞬間に指の間からこぼれ落ちるのを知っている。だから僕の気持ちを理解してくれるはずだ。

 君のことを知りたいんだ。僕のことを分かって欲しいんだ。愛しあう前に話をしようよ。それから愛しあおう。そしてまた話をしよう。それからもう1度愛し合おう。愛はそうやって少しずつ成長していくはずだ。僕らは似た部分をたくさん持っている。でも僕らの道のりは決して楽なものにはならないだろう。似た部分を見せあって安心するのが愛じゃない。違った部分を克服していくのが本当の愛だ。

 青臭い考えだと思うかい? 僕はちっともそうは思わないよ。初めから成熟した愛が存在しない限り、1から始めるしかないじゃないか。

 僕らがなぜ出会ったのかは、遠い未来に2人の愛が実を結んだ時に初めて分かることだ。そしてそこに僕らの明日がある。



photo : Takuji




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