2020年3月18日水曜日

4つの《Passing》

 リマスタリングの作業に入っている。
 1985年のアナログ・レコード、その後に再発されたCD、2007年のリマスタリング盤、届いたばかりのリマスタリング音声データを聴き比べる。
 最初のCDの音は、今となってはお話にならない。
 2007年のリマスタリングの時は、80年代のCD制作技術の限界でペラペラになってしまっていた音を、くっきりと前に出すアプローチで作った。
 そして今回のリマスタリングのテーマは、限りなくアナログの音に近づけ、そのふくよかな音をデジタルで再現すること。
 アナログ・レコードと最新リマスタリング音声を、切り替えながら何度も聴くことになった。アナログの音に肉薄することができた。その上で艶っぽさも加味された。

 12インチ・シングル《微熱夜》の音も届いた。30センチのアナログ盤を45回転で回すという、あだ花のような形体の作品だった。この時期からスネアの音色が妙に派手な時代に突入している。
 ふたつの作品が、リマスタリングで見事に蘇った。


 そしていよいよ、Wonder 5が集結してセルフ・カバーのリハーサルに入った。
 80年代のアレンジは、シンコペーションを多用している。小節の頭でコードを変えるのではなく、ひとつ前の小節の4拍裏で変える。ちょっと跳ねた感じになる。それを「食う」という言い方をする。
 当時はやたらと「食う」アレンジが多用された。軽快にはなるが、こね回した感じにもなって落ち着かない。
 例えば〈もうすぐ〉の「俺が歩き始めるの | を」のコード・チェンジがそう。ここで「食う」アレンジの意味をまったく感じない
 そんなアレンジを、ほぼ小節の頭でのコード・チェンジにしていく。
 これを称して、「悔い(食い)改める」。


photo : Takuji


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