80年代後半、事務所に1人の若者がローディーとして入った。主に俺の現場を担当していて、ガッツあふれる男だった。
何年か一緒に仕事をし、彼はその後、クロサワ楽器に入社した。
彼の結婚披露宴に招待された。
スピーチに立ったクロサワ楽器の上司の方が、こんなエピソードを披露してくれた。
「私は彼が入社する時の面接をやりました。その時、『うちの会社を希望した動機は?』とたずねました。普通なら『御社の経営方針に対して』みたいなことを答えるところですが、彼は違いました。目をキラキラ輝かせながらこう言ったんです。『はい、僕は音楽が好きだからです!』。私はすぐに彼の採用を決めました」
俺がクロサワ楽器でギターを買ったりメンテナンスを頼んだりするのは、彼がいるからだ。
今や彼は、部長の肩書きを持っている。
3/25 吉祥寺スターパインズカフェのライヴを、ひさびさに見に来てくれ、すごく感動してくれた。終演後の楽屋で、熱いハグを交わした。
翌日、彼からラジオ出演のオファーが届いた。FM COCOLOで、弾き語りと1人語りの10分、マンスリー・ゲストということ。詳細が分かったら、お知らせするね。
しばらくケースにしまっていたマーチン D-28を取り出して、弾いている。ずっと他のギターに浮気していたから、音もすねたかなと思っていたが、さすが女王のギター。堂々たる音色だ。
photo : Masashi Koyama
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