2025年5月30日金曜日

対談 小山卓治 vs. 内藤 順司 Part 4

 DVD《MANY RIVERS TO CROSS》関連の書き込みは今回で最終回。長い文章を読んでくれてありがとう。
 そして改めて、内藤順司に感謝。


《MANY RIVERS TO CROSS》全編公開(YouTube)


■旅の終わり。そして未来へ

内藤:ここ何年かは、スケジュールの空きがあればずっと編集してた。去年の9/27のバンドライヴが終わって、その段階である程度すべての映像がそろったから、10月の頭に1週間くらいスケジュールの空きがあった時、もう一気にみたいな感じで編集した。7連続徹夜っていうのはオーバーだけど、3時間とかは寝てるけど、起きてる間はご飯を食べてる時もずっとやってた。そこまで熱情が持つんだ。ここまで没頭できるんだっていうのは20年振りで、自分でもびっくりしたよ。

卓治:ロードの部分をモノクロにするっていうのは、最初から決めてた?

内藤:迷ってはいたけれど、純粋なモノクロにするか、彩度を落としたカラーにするかを悩んでただけで、企画の時からロード部分はモノクロ、バンドの部分はカラーって考えてた。カラーも最初の方はちょっと彩度を落としたカラーにしたけど、最後はフルカラー。ほとんど分かんないかもしれないけど、微妙に50パーセントカラーのところもある。きめ細かく手をほどこしてる。
 大きな流れで最後に気にかけたのは、今までの王道の小山卓治っていうものと、今現在の小山卓治というものと、あとほんの少しでもいいから、未来に対しての小山卓治みたいなのが表現できてれば俺にとってマルだと思ってた。
 バンドのフルバージョンで〈真夜中のボードビル〉と〈失われた週末〉が入ってるっていうのは、勝手な俺の思いこみだけど、この2曲に俺は未来を感じたんだ。THE CONXから始まって歴代のバンドがあって、今のバンドのこの音に未来を感じた。だから構成的にこの2曲はフルでちゃんと見せたいと思った。

卓治:内藤から最初にもらった構成案を改めて読んだんだけど、構成案通りの絵がちゃんと撮れてるんだよね。撮影が始まる前の段階では、まあ、こんな風にはならないんだろうなあって思ってたんだけどさ。キーワードの「歩く足とギターケース 流れる景色と雲 煙草を吸うアップ 街をうろつく 口走る言葉 楽屋 リズムを刻む足 怒濤のライヴ」とかさ、意外とちゃんと撮れてる。

内藤:俺の場合は最初にイメージを固めて、そういうのは見ないようにしてた。でも全部あるね。

卓治:あとさ、構成案では、ラストのエンディングの曲が〈祈り〉になってた。でもその段階では〈祈り〉を改めて歌うつもりはなかったんだよね。ところが《Operetta Of Ghosts》を作った時に〈祈り〉をレコーディングして、それが採用されちゃったんだよ。不思議な流れだなと思って。

内藤:不思議だよね。構成を考えてた時、何となくつながりとして最後に〈祈り〉っぽくなったから書いただけだったんだよ。あんまり深くはなかった。《Operetta Of Ghosts》の〈祈り〉のレコーディングも俺行ったじゃん? あの時、サウンドがアイリッシュっぽくなってたから、音だけ聴いてたらエンディングではないなと思ったんだ。で、また新たなエンディングを考えなきゃ、とか思いながら、ある時ざっくりと編集してて、ちょうど《Operetta Of Ghosts》のCDあるし入れてみっかと思ってやってみたらピタッとはまった。自分でも予想外に。

卓治:オープニングの〈New York Concerto〉もそうだよね。構成案では、オープニングは心臓の音から入るってイメージで書いてあって。

内藤:〈New York Concerto〉がそのイメージに近かったから、それをそのまま使わせてもらった。穴井マジック(リミックス)があったけどね。そうやって2人が意識外のところで反響し合いながらできたんじゃないかな。

卓治:メドレーから〈Aspirin〉に行って、そこで終わるかと見せかけてからのくどさ加減といったら。

内藤:(笑)ほんとくどいよな。

卓治:普通、あの流れでいったら〈Aspirin〉で終わりだろ。そこから20分あるんだぜ。

内藤:DVDだと、普通は特典映像とか考えるじゃん。でもこれはひとつの作品だと思ってるから、言ってみれば〈Aspirin〉で本編終わりで、そっからアンコールみたいな感じ。小山ちゃんも、倒れながらくたばりながら、小山ちゃん自身のアーティスト活動もくどいからさ。

卓治:(笑)そういうまとめ方するか?

内藤:エンディングも、テロップが流れて、もう小山は出てこないだろうと思ってると、また出てくる。あれはさすがに俺もしつこいかなと思ったけど、あえて。

卓治:トータルでどのくらい撮ったの?

内藤:膨大な量だよね。見るのもいやだ。200時間くらいか。

卓治:すげえな。そりゃあ見返したくないよな。

内藤 200時間が103分でしょ。そんな大したことないよね。
 ビデオのためのライヴじゃないから、あくまで音楽活動の流れの中で、予定してあっても、予定外のことが起きる。それが面白いよね。小山ちゃんのエッセイにもあるけど、ゴールの見えないスタートを切って、どうにかたどり着いたなって。たどり着くもんだなって思った。でも妥協がない感じでたどり着けたよ。出さなきゃいけないんだみたいな締切とかなく、それがピタッと20周年のタイミングになって、納得する形で出せるから。みなさん疲れるかと思いますけど。

卓治:長いし、くどいぞ。

内藤:長く感じるのかな? 俺も小山ちゃんも何100回と見てるから、次のシーン次のカットまで全部憶えてるからね。
 俺は個人的に、〈汚れたバスケットシューズ〉が一番好きなんだよね。20年の軌跡もあるし、今回のアルバムにも入ってるし、俺の気持ちともピッタリ合ってる。「今さら互いを思いやったりなんかしないけど」ってところを聴いて、俺はすべてが救われるんだよ。




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